【映画】『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』(2017) オランダの黄金時代とは?

【映画】

こんにちは。ダチョウです!

本記事は、タイトルの映画についてです。

子<br>ダチョウ

ダチョウ

禁断の愛やオランダ黄金時代の日常を楽しみたい方、狂気やバブルに興味がある人におすすめ!

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本作のみどころ

・チューリップ・バブルは、実際に17世紀のオランダで起こった。
・夫人ソフィアと画家ヤンの関係には、フェルメールの世界が反映されている。
・オランダ黄金時代の経済状況や日常生活を楽しめる。

作品情報

 本作は、ジャスティン・チャドウィックによるものです。1968年、彼はイギリスのマンチェスターに生まれました。1993年から映画制作に関わり始めます。主な作品には、『ブーリン家の姉妹』(2008) や『マンデラ 自由への長い道』(2013) があります。本作は、デボラ・モガーの小説『チューリップ熱』(2001) に基づいています。

あらすじ

 舞台は、17世紀オランダ。主人公は、小さい頃に両親と死別し、修道院で育った女性ソフィア。彼女は、年配の豪商コルネリス・サンツフォールトと結婚する。彼は自身の跡継ぎを残したいと思っているが、なかなか子どもができないことに悩まされている。

 ある日、コルネリスは、サンツフォールト家の肖像画を貧乏画家のヤンに依頼する。ヤンは、ソフィアを描いているうちに、彼女の美貌に惹かれ始める。やがて二人は禁断の恋に陥ってしまう。

 そんな中、サンツフォールト家の女中であるマリアの妊娠が発覚する。マリアに弱みを握られているソフィアは、ある計画を思いつく。まず、自身が妊娠しているように仕立て上げること。次に、マリアが出産した後、自身は帰らぬ人になったふりをすること。そして、最終的にヤンと駆け落ちする、という内容であった。

 ソフィアとヤンは、生活資金を作るため、当時流行していたチューリップ投機に熱狂していく。しかし、狂気に満ちたチューリップ市場は、政府が取引を禁じた途端、一夜にして崩壊してしまう。

 事の真相を知ったコルネリスは、資産をマリアに譲り、オランダ領東インドのバタヴィアへ移住する。そこで家庭を築き幸せに暮らす。一方で、ソフィアは修道院に戻る。ヤンはというと、彼の絵画の才能が評価され、修道院での仕事を得る。そこでソフィアと再開する。 

チューリップ・バブルは実話?

 17世紀前半のオランダでは、実際にチューリップの球根が高値で売買されていました。1637年に価格はピークに達し、やがてチューリップ市場は暴落します。世界史上初のバブルだといわれることがあります。

 当時のオランダ経済は、海外との交易をもとに黄金時代をむかえていました。そんな中、オスマン帝国から転がり込んできたものがチューリップの球根。オランダ市民は、色とりどりに美しく咲き誇るチューリップの虜となりました。中でも、希少性を持つ白の縞模様のブレイカー種が大人気。取引が盛んに行われるにつれて、球根の価格は急上昇していきました。作中では、18ギルダーで仕入れた球根が、市場で920ギルダーで落札されています。見事な熱狂ぶりです。

 この球根価格の上昇と下落の原因には諸説あります。30年戦争、またはペストの流行や通貨供給量の増大が影響したなどです。現代のコロナ・ショックに通ずる所があるかもしれません。ちなみに、チャールズ・マッケイという人物が、チューリップ・バブルに関する本を出しています。『狂気とバブルーなぜ人は集団になると愚行に走るのか』(1841) です。

画家のモデルはフェルメール?

 この作品の見どころの一つは、既婚女性ソフィアと貧乏画家ヤンの禁断の恋です。画家としてのヤンは、バロック期を代表するオランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632年生まれ)を想起させます。フェルメールの作品には、フェルメール・ブルーと呼ばれるラピスラズリを原料とした青色が使用されています。作中でヤンは、肖像画を描きながら、「青は海の彼方でとれる最も高価なウルトラマリンを原料としている」ことに言及しています。

 その他、ソフィアがヤンからの手紙を読むシーンや窓の外を眺めるシーン、そして窓から差し込む光の加減など、当時の俗世を克明に描写したフェルメールの世界が見事に反映されています。ヤンが描き上げたソフィアの肖像画は、『真珠の耳飾りの少女』そっくりです。

 ヤンの人生は、幸か不幸かソフィアとチューリップ投資に熱狂した結果、傾いていきます。

All this stemmed from a love of beauty, a passion for flowers whose lives are even briefer than our own. But while the blooms had faded, the paintings remained.

(全ては美を愛する心のせいだ。人の命より遥かに短い花への情熱の果てに。しかし、花が消え去った後でも、絵画は残る。)

 しかし、ヤンが描いた作品は、8年後に評価されることになるのです。ちなみに、フェルメールの作品は、彼の死後に最評価されます。

黄金時代の裏にある世界とは?

 作中で、2つの地域がでてきます。1つは、アフリカで、もう1つは、オランダ領東インドです。

 女中マリアは、魚売りのウィレムと恋仲にありました。しかしウィレムは、夫人ソフィアがヤンの家へ駆け込んでいく姿をマリアのものだと見間違えます。おまけに酒屋ではスリにあいます。自暴自棄になった彼は海軍に連れて行かれます。そして、1年間アフリカに身を置きます。

 コルネリスは、ソフィアが不貞を働いていたことと、生まれてきた子どもが自分の子どもではなく、マリアとウィレムの間の子どもだったという真実を知って、愕然とします。しかし、コルネリスはソフィアを貴重な銀器のように扱ったいた自分に対して罪の意識をもちます。そこで、コルネリスは自身の財産を女中マリアへ引き渡します。彼はオランダを離れ、東インドバタヴィアへと旅立ちます。

 16世紀の後半、スペインから独立を果たしたオランダは、人的資本をもとに急速に成長を遂げ、世界の覇権を握ります。1602年には東インド貿易会社が設立され、海外からかき集められた財により、オランダは繁栄していきます。オランダの黄金時代は、作中で触れられるアフリカや東インド抜きには語れないのです。

ダチョウ<br>先生
ダチョウ
先生

コルネリスは、スパイス王。作中ではバンダ諸島からのナツメが出てくる。オランダの外の世界に目を向けると作品がよりいっそう面白くなるぞ。

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