【本】『世界をダメにした10の経済学-ケインズからピケティまで-』関美和訳、日本経済新聞出版社、2019

こんにちは。ダチョウです!

本記事は、タイトルの本についてです。

子<br>ダチョウ

ダチョウ

現代社会の見方や経済学の考え方についてを知りたい人にはおすすめ!

画像をクリックするとアマゾンサイトに飛びます

作品情報

 ビョルン・ヴァフルロースは、フィンランド生まれです。1979年、ハンケン経済大学で経済学の博士号を取得。経済学教授として、ブラウン大学、ノースウェスタン大学で教鞭を採った後、1990年代初頭に、投資銀行を設立します。その他の著書に『市場と民主主義』があります。

概要

 経済学は、アダム・スミスに始まり、ジョン・メイナード・ケインズが登場するまで自由放任主義の立場がとられていた。しかし、20世紀前半に、政府介入型のケインズ理論が登場してから、彼の理論をもとに、さまざまな経済理論が派生していった。本書は、自由放任主義の立場から、問題の解決に何かと政府介入を用いる邪悪な経済理論へメスを入れる。

邪悪な理論

 本書で登場する邪悪な経済理論は下記の通りだ。

1. 緊縮財政は、経済成長の足かせになる
(Fiscal Austerity Strangles Economic Growth)
2. 資本主義は搾取を生みだす
(Capitalism Breeds Exploitation)
3. 増税は財政赤字の穴埋めになる
(Higher Taxes Will Take Care of the Deficit)
4. 格差是正は経済成長につながる
(Equality is Good for Growth)
5. 「インフレ」とは消費者の物価の上昇である
(Inflation is the Increase in Consumer Prices)
6. 市場は非効率である
(Markets are Inefficient)
7. 金利はマイナスにできない
(Interest Rates Cannot Be Negative)
8. 自由市場は存在しない
(There is No Free Market)
9. 「陶酔的熱病、恐慌、崩壊」は資本主義の宿痾だ
(Euphoria, Panics, and Crashes: Endemic of Capitalism)
10. インフレ退治が中央銀行の唯一の仕事である
(Central Banks Should Only Fight Inflation)

ニューディール政策は大失策?

 1929年10月24日、ニューヨーク株式市場の株価が大暴落を起こした。それを機に、アメリカを始め、世界経済は不況の時代へと突入していった。いわゆる世界大恐慌だ。しかし、本書では、1930年までに株式市場は暴落以前の水準まで回復していたと言及されている。景気下降の原因は、介入主義者たちの政策にあった。まず、財政面では、保護主義(賃上げ・公共投資・スムート・ホーリー法など)がとられ、金融面では、FRBによって金融の引き締めが行われた。その後、それらの政策を基にして、ニューディール政策が2回に渡って実施された。まず、第1次ニューディール政策(1933~34年)では、財政面において、テネシー川流域開発公社などの公共投資による雇用創出や農業調整法、全国産業復興法が実施され、そして金融面においては、グラス・スティーガル法による金融規制が実施された。次に、第2次ニューディール政策(1935~38年)では、財政面において、社会保障法や失業保険などの公共事業と増税が実施され、そして金融面においては、金融の引き締めが実施された。しかしながら、景気は下降していった。この一連の現象に関して、ニューディール政策の設計者であるヘンリー・モーゲンソー財務長官は、本政策が失敗だったことを認めている(26頁)。

☆ニューディール政策の効果については複数の見解がある。誰がどのようなことを述べているのか確認しよう。
★ケインズの一般理論とニューディール政策の関係性(無関係?)を確認しよう。

格差は経済成長のために必要?

  本書では、ジョセフ・スティグリッツとトマ・ピケティの格差論に言及されている。前者は、2001年に情報の非対称性に関する理論に対してノーベル経済学賞を受賞しした経済学者だ。彼の著書『世界の99%を貧困にする経済学』(徳間書店)では、格差論について、次のように述べられている。「金持ちは貧乏人より貯蓄額が多い傾向があるため、所得分配が不平等だと、消費は減り、分配が平等なケースと比べ、成長が鈍る」。これに対してヴァフルロースは、財政政策による総需要の悪化がもたらす成長効果は、短期的であり、長期的には、消費ではなく、人的資本とテクノロジーへの投資が重要だと言う。(122頁)つまり、社会がより良くなっていくためには、能力がない人よりも、能力のある人にお金を渡して、上手く運用してもらった方がいいということだ。
 次に、ピケティと言えば、『21世紀の資本論』を執筆し、注目を集めた人物だ。彼の主張は次の通りである。「世界中どこの地域においても、資本収益率(利潤、配当金、利息)がGDP成長率(国民所得)を上回っているため、国民所得に占められる資本から得られる所得の割合は増える。資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすい。」これに対して、ヴァフルロースは、ピケティは人的資本を分析対象から排除している。世界上位1%の富豪の所得が上昇したのは、金融資本ではなく、人的資本によるものであると言う。(141頁)つまり、所得増加の要因は、資本所得ではなく、労働資本にあり、r>gと無関係だということだ。

☆1980年代に途上国に対して実施された、ワシントン・コンセンサスについて確認しよう。スティグリッツはそれらの政策を格差の原因だと批判している。
★テクノロジーの進歩に関して、シュンペーターの理論について確認しよう。

人的資本に注目しよう

 人的資本とは、人間がもつ知識や技能などの能力を資本として捉えたものだ。人間は、生まれてから社会に出るまで、そして社会に出てからも、教育と経験を通して、特定の知識や技能を身につけるために、相当な時間と努力をつぎ込む。つまり、特定の能力を修得するために投資し、人的資本を積み上げるのだ。大切なことだ。しかし弊害もある。経済学を専門とする経済学者の場合を考えてみよう。彼らは経済学者になるために、経済学の中で特定のモデルに投資してきている。例えば、ケインズ主義から派生した学者は、何か問題があれば、必ず政府による介入を持ち出す。主張を変更することは許されない。なぜならば、意見の変更は、信頼を低下させ、収入が減る、もしくは失業してしまうおそれがあるからだ。そのため、自身が投資し続けてきたモデルを擁護するように働く。ヴァフルロースは、現実を受け入れず、意見の変更ができない価値のない人的資本は廃棄すべきだと言い切る。(362頁)

☆ゲーリー・ベッカーの『人的資本』(1964)を確認しよう。

ダチョウ<br>先生
ダチョウ
先生

分厚い本はつまみ食いじゃ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました